ページスピード高速化のROI(投資対効果)を定量的に示した研究として、DeloitteとGoogleが2020年に共同実施した調査があります。
これは欧米の複数業種・ブランドのモバイルサイトを対象に、サイト速度をわずか0.1秒改善した場合のビジネス指標変化を測定したものです。
「Milliseconds Make Millions(ミリ秒が数百万ドルを生む)」と題されたレポートには、次のような劇的な改善結果が記されています:
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小売業界: モバイルサイトを0.1秒高速化すると、コンバージョン率が8.4%向上し、平均注文額(AOV)が9.2%増加。
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旅行業界: 0.1秒の短縮で、コンバージョン率が10.1%向上、平均注文額が1.9%増加。
わずかな改善で一見誤差にも思える0.1秒ですが、年間売上規模が大きい企業ほどこの%改善が意味する増収額は莫大です。
例えば年商10億円規模の小売ECなら、CVR+8.4%は単純計算で+8400万円の売上増につながります。
加えて客単価も9.2%上がるとなれば、売上全体では1割近い伸びになる可能性があります。旅行サイトでもCVR+10.1%は大きく、
0.1秒短縮の恩恵が極めて大きいことが分かります。さらに本調査では他業種についても、高級ブランドサイトではセッションあたりページ閲覧数が8.6%増加し、
金融などリード獲得系サイトでは直帰率が8.3%改善するなど、軒並み良い指標変化が観測されています。
Deloitteは「サイト速度改善はファネル全体を底上げし、結果として収益を押し上げる」と結論づけ、
企業はモバイル高速化へ積極投資すべきと提言しています。
このレポートのポイントは、具体的な改善幅と成果を関連づけて示した点です。
従来、「高速に越したことはないが、どの程度の改善にどれだけ効果があるのか」という問いに答えるのは難しい部分がありました。
Deloitteの調査によって、ミクロな改善でも無視できない利益効果が数字で示されたため、企業は高速化施策に対する社内説得を行いやすくなりました。
経営層に対しても「これだけの投資でページ表示を0.1秒短縮すれば、CVRが約8~10%伸びる可能性がある」と説明できれば、予算承認も得やすくなるでしょう。
実際、本調査結果を受けて複数の大手企業がモバイル速度改善プロジェクトを立ち上げ、組織横断で取り組みを強化する動きが見られました。
高速化はユーザー体験施策であると同時に、明確に売上アップの投資案件であるとの認識が広まったのです。