高速化事例・調査

8. 1秒の改善がもたらす巨大利益 – SOASTA×Google (2017年)

  • 2025.8.15
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2017年にGoogleはパフォーマンス計測会社SOASTA(同年にAkamaiが買収)と協力し、

「オンライン小売性能レポート (State of Online Retail Performance)」を発表しました。

この大規模研究では、1か月間にわたる約100億件ものリアルユーザーモニタリングのデータを分析し、

ページ速度と主要KPIの相関を導き出しています。

特に驚くべきは、ECサイトのページロードが1秒遅延するとコンバージョン率が最大20%低下するという指摘です。

先述のAberdeen調査よりも影響率が高く見えますが、これはモバイル利用増大やユーザー期待のさらなる高まりを反映した数値とも考えられます。

たった1秒で2割もCVRが落ちる可能性があるというのは、EC事業者にとって極めて深刻なインパクトです。

同レポートでは他にも重要な知見が示されています。

例えば、「ページ読み込みが100ミリ秒遅くなるとコンバージョン率が7%下がる」ことや、「2秒の遅延で直帰率が103%(約2倍)に増加する」ことなどです。

100ms遅延の7%CVR低下という結果は、前述のAmazonやウォルマートの数値(100msで売上1%変動)よりも高い割合ですが、CVRベースである点に留意が必要です。
いずれにせよ、ミリ秒~秒単位の遅延蓄積が確実にユーザー離脱や売上減少を引き起こすことが、大規模データから改めて裏付けられました。

この研究は「ミリ秒がミリオン(百万ドル)を生む」とも形容され、業界に大きなインパクトを与えました。

 

実際、このSOASTA/Googleの知見はその後の企業の投資判断にも影響を与えています。

例えば同レポートに参加したある大手ECでは、ページ速度改善を最優先KPIに位置付け直し、

全社プロジェクトとしてパフォーマンス最適化に取り組んだといいます。

結果、サイト全体の平均読み込み時間を短縮し、セッションあたりのPV数向上やバウンス率低下、

そしてCVR改善による売上増という成果を収めました。

「高速化への投資は確実にROIを生む」

——この認識が広まったことで、2017年前後から現在に至るまで、企業のWeb高速化予算は増加傾向が続いています。