2017年にGoogleはパフォーマンス計測会社SOASTA(同年にAkamaiが買収)と協力し、
「オンライン小売性能レポート (State of Online Retail Performance)」を発表しました。
この大規模研究では、1か月間にわたる約100億件ものリアルユーザーモニタリングのデータを分析し、
ページ速度と主要KPIの相関を導き出しています。
特に驚くべきは、ECサイトのページロードが1秒遅延するとコンバージョン率が最大20%低下するという指摘です。
先述のAberdeen調査よりも影響率が高く見えますが、これはモバイル利用増大やユーザー期待のさらなる高まりを反映した数値とも考えられます。
たった1秒で2割もCVRが落ちる可能性があるというのは、EC事業者にとって極めて深刻なインパクトです。
同レポートでは他にも重要な知見が示されています。
例えば、「ページ読み込みが100ミリ秒遅くなるとコンバージョン率が7%下がる」ことや、「2秒の遅延で直帰率が103%(約2倍)に増加する」ことなどです。
100ms遅延の7%CVR低下という結果は、前述のAmazonやウォルマートの数値(100msで売上1%変動)よりも高い割合ですが、CVRベースである点に留意が必要です。
いずれにせよ、ミリ秒~秒単位の遅延蓄積が確実にユーザー離脱や売上減少を引き起こすことが、大規模データから改めて裏付けられました。
この研究は「ミリ秒がミリオン(百万ドル)を生む」とも形容され、業界に大きなインパクトを与えました。
実際、このSOASTA/Googleの知見はその後の企業の投資判断にも影響を与えています。
例えば同レポートに参加したある大手ECでは、ページ速度改善を最優先KPIに位置付け直し、
全社プロジェクトとしてパフォーマンス最適化に取り組んだといいます。
結果、サイト全体の平均読み込み時間を短縮し、セッションあたりのPV数向上やバウンス率低下、
そしてCVR改善による売上増という成果を収めました。
「高速化への投資は確実にROIを生む」
——この認識が広まったことで、2017年前後から現在に至るまで、企業のWeb高速化予算は増加傾向が続いています。