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【連載 第3回】スマホサイトの表示速度低下は売り上げ減に直結、167サイトの計測で分かった課題とは?

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今回は、スマートフォン対応サイトにおいて無視することのできない「表示スピード」の重要性について解説します。(この記事はITmedia マーケティングで連載した記事となります)

第2回「課題山積のスマホ対応、『応急処置』では乗り切れない 」は「手っ取り早くスマホ対応をしてしまいたい」と、安易で近視眼的な方法でスマートフォン(以下、スマホ)サイトを作ってしまっている日本の現状をまとめてみましたが、問題はモバイル対応の方法だけではありません。

今回は表示スピードに注目してみましょう。形だけはスマホ対応をうたいながら、その実とてもファイル容量が大きなモバイルサイトがたくさんあります。ページ当たりの容量が3Mバイトを超えるようなものも多く、中には15Mバイトもの容量があるケースも目に付きます。スマホ画面の限られた面積に表示するには明らかに情報過多であり、これでは表示そのものが遅れてしまいます。また、表示速度を速める上で容量以外の大切なファクターとは何でしょうか。以下に見ていきましょう。

Amazonが見つけた法則

 2006年、米Amazonの元開発エンジニア、グレッグ・リンデン氏(リコメンドエンジンの開発者としても有名)は、A/Bテストを繰り返して、表示速度に次の法則を発見しました。

「0.1秒の遅延が発生すると、売り上げは1%ほど減少する」

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つまり1秒ほど表示が遅れると、そのショップの売り上げは10%ほど失われてしまうという衝撃的なものです。年商1億の企業なら、1秒の表示の遅れで100万円相当ですから、ばかにはできません。

表示スピードに5秒以上かかるとユーザーの74%が離脱する

また、

米Googleでは2006年、当時検索商品およびユーザーエクスペリエンス担当副社長だったマリッサ・メイヤー氏(現在は米Yahoo! CEO)が、検索結果の表示において「表示スピードが0.5秒遅くなると、検索数が20%ほど減少する」と発表しました。

また、同社のブログでは米Compuwareの調査を基に「スマホの表示スピードに5秒以上かかるとユーザーの74%は離脱してしまう」という発表しています。スマホの表示速度はビジネスの成功を左右する重要な性能といえます。

同じように各社からも次々と発表がありました。
 

  • 2秒のレスポンスタイムの低下は、ユーザー1人当たり、4.3%の売り上げ低下を招く(米Microsoft)
  • 表示の速いページを提供すると、訪問1回当たりのページビューが50%増加する(米AOL)
  • ページの読み込みを7秒から2秒に短縮した結果、売り上げが7~12%増加する(米Shopzilla)
  • ページ表示の2秒の遅れでユーザーの要求が2%減り、3.75%のクリックが失われ、全体にわたって満足度が減る(Google)

 
Webでビジネスを展開する通販事業者などにとっては、恐ろしくなるようなデータが次々と明らかにされています。果たして日本のネット通販各社のスマホサイトにおける各表示スピードはどうなっているのでしょうか。

Googleのツールでスピードを計測してみた

表示スピードの計測ツールとして、Googleは2014年5月から「PageSpeed Insights」を公開しています。これを使ってネット通販167サイトを計測してみました。このツールは、ページのパフォーマンスのうちネットワーク環境に依存しない部分(サーバ設定、ページの HTML 構成、画像やJavaScript、CSS などの外部リソースの使用方法)のみを計測するものですが、Web改善のための手軽なツールとしては、非常に有効です。

ちなみに、このツールの評価基準は、「優秀なサイト」が緑(85点以上)、「まあまあ合格」が黄色(65~84点)、「頑張りましょう」が赤(64点以下)となっています(※)。

結果は以下のようになりました(以下の表示速度計測は2014年10月にドーモがGooglePageSpeed Insightを使って計測したもの。計測は3回行い平均値を抽出)。

(※)2014年末に、採点評価枠が変更になりました。今回のデータは以前の評価枠での数値です。

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これらの計測の結果、圧倒的な表示の速さで1位になったのがAmazonです。続いてヨドバシカメラやニッセンなどのサイトが速いという評価となりました。

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また、評価の分布図にも注目してみてください。

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緑はアマゾン1社のみ。黄色は14社 そして、ほどんどのサイトが赤、つまり全体の8割がこのツールの評価では不合格となっているのです。

この結果は、日本の通販サイトがこれまでモバイルの表示スピードに対していかに無頓着であったかを物語っているといえます。こうなった原因の1つに、ブロードバンド回線の利用を前提としたPCサイトが10年以上もWebサイトの中心であり続けたことが挙げられます。急にスマホ対応を迫られることになったデザイナーやWeb担当者に「表示の高速化」という観点が抜け落ちていたのでしょう。

この問題は回線が高速化すれば解決できると考える人もいるかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。実際、3Gではもちろん4Gの高速モバイル回線においても、エリアによる電波状態の差異が生まれ、都心やユーザーが密集するエリアなどでは少なからず通信に不安定さが生じています。そうした不完全な通信環境でも閲覧できるようにするために、スマホサイトには軽量でつながりやすいことが求められるのです。

スマホサイトは数十ページの単位でストレスを考える

さて、次にこの計測を日米トップ30のネット通販でも試してみました。すると、圧倒的な差で、米国のWebサイトの方が速く表示されるということが分かります。モバイルサイトもPCサイトもともに10ポイント以上の差がありますから、この違いは歴然です。

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こうした細かいスピードチェックに意味があるのか疑問に思う人もいるでしょう。実際、ある通販業者から「なぜコンマ幾つの世界に血眼にならないといけないのでしょうか?」と質問を受けたことがあります。彼は言います。「欲しいものがあってWebサイトに来訪している人は、少々遅くても絶対に待ちますよ」と。

買う気満々の人であれば、そうかもしれません。しかし、この主張には購入に曖昧な人が考慮されていません。そもそも重要なのは、買うか買わないかのライン上にいる人々にいかに購入を促すかです。

また、ユーザーにストレスを与えないポイントは「ページ単位の表示スピード」ではありません。ユーザーは複数のページを閲覧します。しかもバーゲンシーズンになると、50~100ページくらいを見ることも珍しくありません。

例えば2つのサイトがあり、1ページ表示するのにそれぞれ5秒と10秒であったとして、前者なら100ページで500秒、後者なら1000秒と、その差は500秒。実に8分30秒もの違いが生まれてきます。自ずとユーザーのストレスが違ってくることはお分かりいただけるのではないでしょうか。

スマホでの表示スピードを決める3つの要素

それではスマホサイトの表示スピードを速くするためには、どうすればいいでしょうか。ここには大きく分けて以下の3つの要素が影響することになります。

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このうち通信環境は、ユーザー側の問題ですからどうしようもありません。モバイル回線が現在の固定回線並みのブロードバンドになる第5世代モバイル通信システム(5G)が実現し、普及するにはまだ10年はかかります。次にサーバの性能などインフラ強化もありますが、これは最もコストが掛かるところです。無視できない課題ですが、やはり簡単に手を出せることではありません。

そこで、最も手っ取り早く取り組めるのがフロントエンドのチューニングです。具体的には画像の軽量化、JavaScriptの圧縮CSSの軽量化などを行います。一つ一つは小さなことかもしれません。しかし、これらの対応こそが、最も低コストで即時性のある方法なのです。

フロントエンドのデザインで特に重要なのは画像の軽量化です。今まで、多くのWebサイトでは無頓着に大きな画像を使い過ぎていたきらいがあります。われわれの調査では、3Mバイトを超えてしまうサイトも少なくありません。中には5Mバイト 7Mバイト、さらに15Mバイトというようなスーパーへピー級のサイトもありました。これでは1分待っても何も表示されないことになりかねません。少なくとも1Mバイトを切ることを目指してください。ちなみに、軽量だといわれるアマゾンの商品ページは、ほぼ500Kバイト以下で作られています。

レスポンシブWebデザインは通販では使えない

ここで注目したいのが、Google推奨といわれているレスポンシブWebデザインは、ネット通販の世界ではあまり使われていないという事実です。われわれの調査でもトップ150社では採用するサイトはなし。トップ300でもわずか2社のみでした。PC用も兼ねるレスポンシブWebデザインはどうしても大きな画像を扱うケースが多く、表示速度面で不利となってしまうからです。

表示スピードについては、Googleも今後の検索結果の表示順位における重要なファクターになるだろうと宣言しています。また、2015年2月には表示速度が遅過ぎるサイトに対して「スローラベル」を付けるというテストが始まったという報告も出てきました。

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購買行動にストレスを与えないという点でも、今後のスマホサイトでは表示スピードが重要な要素になってきます。表示スピードの向上は、購買に至るカスタマージャーニーにおいてユーザーストレスを与えないということに尽きます。ようやくスマホ対応に着手したばかりという企業も多いと思いますが、「より速く」は、ユーザーに対する正義です。全てのスマホサイトが取り組むべき、次の重要課題になってくると断言していいでしょう。

【連載】ポスト「モバイルゲドン」のスマホサイト
第1回:「モバイルフレンドリー」で結局何が変わったのか? Googleアルゴリズム変更のその後
第2回:課題山積のスマホ対応、「応急処置」では乗り切れない

この記事を書いた人
C1-5 占部雅一
株式会社ドーモ 代表取締役
雑誌の編集者を経て1995年にWeb制作会社を設立。女性コミュニティサイトの立ち上げ・運営、メディアサイトのコンテンツや広告開発に従事。近年は「マルチスクリーン対応」を意識した企業サイトのモバイル対応を推進。ユーザーベネフィットを生み出すモバイルWebの在り方を提唱している。
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Mobify(モビファイ)とは

Googleが認定しているマルチスクリーン対応のための最適化サービス。
デバイスに応じ、専用にデザインされたサイトを表示することができます。
ページの表示を高速化させる仕組みも持ち合せており、ユーザーの離脱を防ぐことが可能です。

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