one web world one web ワールド

 
one web ワールド

【連載 第2回】課題山積のスマホ対応、「応急処置」では乗り切れない

2
モバイルゲドンの影響が明らかになった今、スマートフォン対応は一刻を争います。しかし、現実的には課題山積。何が問題なのでしょうか。(この記事はITmedia マーケティングで連載した記事となります)

前回(「モバイルフレンドリー」で結局何が変わったのか? Googleアルゴリズム変更のその後)は、2015年4月21日に行われた検索エンジン「Google」のアルゴリズム変更により、その影響がどの程度表れているのか、リポートしました。

スマートフォン(以下、スマホ)での検索において「スマホ対応(モバイルフレンドリー)ラベル」の付いたWebページのランクを上げる(そうでないページのランクを下げる)今回のアルゴリズム変更は「モバイルゲドン」と呼ばれ、Web関係者を恐れさせています。実際、モバイルゲドンの影響は小さくなく、スマホ対応を全くしていない場合は、平均して10%ほどのランクダウンが発生しています。また検索結果の上位に表示されるWebサイトだけでなく、ランキングの外の動向まで含めると、そのインパクトはさらに多大なものであることも分かってきました。

しかし、実際にはなかなか思うように対応が進まない現実もあるようです。

「スマホ対応」の現実

そもそも、大企業でさえスマホへの対応はほとんど実行できていません。検索担当者のためのWebサイト「Tokyo Search Professionals」が2015年3月に行った調査では、上場企業3562社のコーポレートサイトのうち、モバイルフレンドリーになっている割合はわずか21.3%といったものでした。

「対応」の中身も問題です。D2Cと日経BPの調査では、B2C企業167社のサービスサイトに限れば67.7%がスマホページを用意しており、29.9%がスマホアプリを提供しているということですから、一見するとかなり対応が広がったように見えるかもしれません。しかし、全ページのスマホ対応を済ませているケースはかなり少ないと予想されます。スマホ対応ページがトップのみであったり第2階層止まりであったりと、対応が部分的なものにすぎないケースはよく見られます。

また、ドーモの調査では、スマホに対応したページを「スクラッチで開発した」という回答が56%、「プロキシ型の変換サービスを利用している」という回答が19%を占めます。つまり、4分の3は「スマホ専用ページ」と呼ばれる別のコンバージョンページを持っているわけです。これらのWebページは、正しくアノテーション設定(※1)をしないと、Googleのスマホ対応ラベルはもらえない仕組みです。また、これらの不完全な対応ではSNSでのシェアがしにくいなど、ユーザーベネフィットそのものが損なわれてしまいます。

※1 PC用とスマホ用それぞれに最適化されたURLが存在することを明示するための設定。 

Webマーケティングを展開する上でも幾つかの問題があります。

PCだけでなく、スマホやタブレットなど複数のスクリーンを介してWebサイトを行き来する「クロスデバイス」な来訪者が増えてきました。ただし、現状のスマホ対応といえば、PC専用サイトとはセパレートな構造で、異なるコンバージョンページを持つスマホ専用サイトを用意することが主流を占めているのが実態です。

02_01
スマホ対応サイト分布。389件のサイトをランダムに抽出して調査を実施した
 

スマホ専用サイトの何が問題なのか

Googleのアルゴリズム変更でスマホに対応したWebサイトは確かに増えました。しかし、その多くは、Google自身が推奨していないスマホ専用サイトというわけです。

スマホ専用サイトには幾つかの課題があります。1つは「二度手間」です。制作作業では従来のPC専用サイトの作業に加え、スマホ専用サイトの制作作業が増えることになります。また、Web担当者の確認チェックや修正の時間も2倍となってしまいます。当初はこの方法で納得していたWeb担当者も、3カ月もするとその膨大な作業負荷にへきえきとしてくるようです。

スマホ専用サイトの運用によって工数が増えれば、当然ですが作業のミスも増えます。いいことなどありせん。また、ある制作会社のエンジニアは「スマホ専用サイトをただ作るのは簡単ですが、無駄が多いと分かっていながら提案するのは、クライアントをだましているような気がしてしまいます」と言っていました。

また、作業工数やコストだけでなく、クロスデバイスでの利用においてはサイトの「同一性」も重要です。今どきのユーザーは複数のデバイスを併用する傾向があります。コンバージョンページが別々に分かれていると、PC専用サイトにスマホ向けのページが出たり、逆にスマホ専用サイトにPC向けのページが出たり、ちぐはぐな表示が発生してしまいます。これらは当然、Webサイトからの離脱を増やし、滞在時間を短くします。

さらに、同じコンテンツを別々のページで展開するとなると、アクセス解析も複雑になります。

02_02スマホ専用サイトの何が問題か
 
こうした点からGoogleでは、古くからコンバージョンページが別々となるスマホ専用サイトを「ふさわしくない」と判断してきました。今のところモバイルフレンドリーテストには、条件に適した処理を施せば合格という「スマホ対応」ラベルはもらえますが、今後はどうなるか分かりません。コンバージョンページを1つに統一しなければいけないということになれば、スマホ専用サイトとプロキシサイトがまず脱落します。

02_03Googleが推奨するスマホ対応の方法(Google公式ブログ 2012年6月12日のエントリーを基に筆者作成) 

レスポンシブWebデザインの死角

コンバージョンページを1つにする、つまりOneWebを実現する代表的な方法がレスポンシブWebデザインです。これは、jQuery(※2)を使って、可変グリッドにより各スクリーンに要素を最適に表示するデザイン技術です。

※2 異なるWebブラウザへの対応を容易にする機能を持ったJavaScript用のライブラリ。

レスポンシブWebデザインはGoogleが推奨し、進歩的なデザイナーたちが注目している方法であり、全てのデバイスからのアクセスを1つのコンバージョンページで完璧に実現します。ただし、大きな欠点が3つあります。

1つ目は、この方法ではフルリニューアルが前提となるので、コストも開発に要する時間も膨大なものになってしまいまうことです。

2つ目は、表示に時間がかかり過ぎること。PC向けの画像をそのままの容量でダウンロードするので、スマホでの表示速度がどうしても遅くなります。そのため、パフォーマンスを追求するEコマースやコンバージョンを求めるページでは、ほとんど使われていない方法でもあるのです。

02_04Eコマース売り上げトップ163サイトをピックアップして、その構築形態を調査 (出典:インプレス総合研究所「インターネット通販TOP100調査報告書2014」)
 
3つ目の欠点が、ユーザーインタフェース(UI)の調整には向いていないということ。A/Bテストやユーザーテストを行い、UIを調整してさらにいいコンバージョンを求めるのは、ネット通販などでは基本中の基本といえます。しかし、レスポンシブWebデザインは特定のページだけを即時修正したくても他に影響してしまうことから、構造的にWebページの微調整が難しいのです。実際、私の知る限り、レスポンシブWebデザインを採用したWebページのほとんどは、公開初期の状態のまま作り放しになっているようです。

OneWebを実現するその他の方法

また、「WordPress」や「MovableType」などの簡易CMS(コンテンツ管理システム)を使ったOneWebの実現方法もあります。ただ、これらは本来スモールビジネスなど小規模なトラフィックを想定した対応方法です。当然、大きなトラフィックやスパイクアクセス(急激なアクセス増加)が発生するキャンペーンサイト、画像を多く使うカタログサイトには向いていません。

そして、いずれの方法もUI変更にはテンプレートの調整が必要です。そのため別途エンジニアやレベルの高いデザイナーに作業を依頼する必要があります。また、表示速度やレスポンスをよくするために、別途、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)などの高速化オプションを用意することも必要になってきます。

OneWebを実現する手段としてもう1つ注目されるようになってきているのが「アダプティブWeb」という方法です。これはカナダのMobifyなどが提唱する方法で、レスポンシブWebと比べて高速表示を実現します。またフルリニューアルをしなくても、既存サイトからスマホ対応ができるという特徴があります。

業者任せにせず自分で対応方法を判断をする

まだ発展途上のスマホ対応ですが、注意点が2つあります。

1つがGoogleのスマホ対応ラベルは、今後もアップデートされる可能性が高いということです。先述したように、現時点では応急措置でもスマホ対応ラベルがもらえる仕組みになっていますが、今後は分かりません。

参考になるのがパンダアップデートとペンギンアップデートです。2012年に始まったパンダアップデートは、既に29回(!)ものアップデートが行われました。またペンギンアップデートも6回アップデートされています。スマホ対応は中期的な視点で長続きし得る確実な方法を選びましょう。無難なのは、レスポンシブWebデザインとアダプティブWebです。逆に、スマホ専用サイトとプロキシサイトは避けておくようにしましょう。

注意点の2つ目が、「よく分からないから、いつもの業者にまかせてしまう」ことです。いつもの業者は信頼できるパートナーかもしれませんが、スマホ対応に対する技術は発展途上の段階で、日々進化しています。

そのため、いつもの業者に任せきりにしていると、Googleの推奨しない従来のスマホ専用サイトを提案されたり、ここぞとばかり、フルリニューアルを提案されるというケースもあります。

一口にスマホ対応といっても、その方法はさまざま。大切なのは、将来につながる中期的な視点で用途にあった正しい選択をすることです。次回は、もう1つの大きな課題、「表示スピード」について解説します。

この記事を書いた人
C1-5 占部雅一
株式会社ドーモ 代表取締役
雑誌の編集者を経て1995年にWeb制作会社を設立。女性コミュニティサイトの立ち上げ・運営、メディアサイトのコンテンツや広告開発に従事。近年は「マルチスクリーン対応」を意識した企業サイトのモバイル対応を推進。ユーザーベネフィットを生み出すモバイルWebの在り方を提唱している。
タグ

記事mobifyロゴ
Mobify(モビファイ)とは

Googleが認定しているマルチスクリーン対応のための最適化サービス。
デバイスに応じ、専用にデザインされたサイトを表示することができます。
ページの表示を高速化させる仕組みも持ち合せており、ユーザーの離脱を防ぐことが可能です。

▸Mobify(モビファイ)についてさらに詳しく

 最新記事