時代は“分散型ネットワーク・メディア”へ
The Power of Distributed Media
【インタビュー】
アンディ・マイヤー氏 / AJアドバイザー代表
IT先進国・アメリカで培ったノウハウ、最新テクノロジーを日本に紹介し続けてきたAJアドバイザー(以下、AJ)。同社代表のアンディ・マイヤー氏は、次世代のネットメディアは“分散型”に向かっていくと力説する。分散型のネットワーク・メディアとは、いったいどのようなものなのか……。また、AJの日本における新しい活動とはどんなものかを尋ねてみた。
(インタビューアー 斉藤政文)
◆いま、世界のネットメディアが生まれ変わろうとしている
アンディ:いま世界中で、ネットメディアのあり方として「分散型ネットワーク・メディア」という考え方が主流となりつつあります。今後、この流れに乗ることができる企業のみが、生き残れるといっても過言ではありません。
「分散型ネットワーク・メディア」という言葉には、馴染みがないと思いますので、簡単に説明しておきます。かつて、インターネットを利用するユーザーは、WEBの利用時に、いくつかのポータルサイトで多くの時間を費やしていました。当時のインターネットの風景は下の図のような感じでした。

つまり、2005年以前は、インターネット利用のPVのほとんどが、ヤフー、MSN、AOLなどの巨大ポータルサイトに集まっていたわけです。もう既に古い言葉となっていますが、ここ2~3年、「Web2.0」という表現が定着してきました。2005年以降から、インターネットユーザーは、知りたい情報をサーチエンジンで検索し、自ら能動的に情報を取得していくという行動を取り始めています。その場合、どんなに巨大で情報量の多いポータルであっても、すべての人を満足させることは不可能です。むしろ極めてニッチでも、自分にあった特別なサイトやブログで情報収集するようになっています。いわゆる「ロングテール現象」です。これはインターネット利用の最初の「分散化」でした。
◆巨大メディアに広告を掲載するより、
分散したカテゴリーを束ねる発想
アンディ:逆に、今のネット世界は下の図のようになってきています。大手サイトの数は、年々減って(弱体化し)しまい、その代わりにロングテールのサイトはADネットワークなどを介してカテゴリー化が進んできています。
たとえば、米国のヤフーは、ユニークユーザー数で74%のリーチがありますが、インターネット全体のPVからすると、たった7%のPVしか抑えていません。(下記参照) .
同じように、ヤフージャパンは、84%のリーチを得ていますが、全体のPVは19%となっています。 (数年前の米国と同じ割合)

アンディ:それではいったいネットユーザーは、インターネットのどこを見ているでしょうか。
米国にしろ日本にしろ、過去数年間において、著しく成長してきているのはMy Space, Face book, Mixi, FC2などのCGM(ユーザ投稿メデイア)と呼ばれるサイトです。こういったCGMの特徴は、ユーザーは自身のブログ、プロフィール、つまり自分のメデイアを形成することを目的にしています。
この延長であり、競争が激しくなっているのが、GoogleのiGoogleであり、My Yahooです。そこでインターネットの第2次の「分散化」が始まりました。
さらに現在では、それぞれの個人ユーザーが、ウィジェットやブログ・パーツを利用して、自分が好きなコンテンツを簡単にアレンジできるようになっています。たとえば、個人のiGoogleページに自分が好きなニュースを集めたり、活動圏内で上映されている映画情報を掲載したりできます。また、ウェジットを活用すれば、自身のブログに気になる情報を掲載したり、逆にファンの読者に届けたりすることができます。今後は、こういったウィジェット経由で、ブログやMy Pageに対して他社のメデイアを掲載することが、加速的に進んでいきそうです。これがいわゆる第3次のメデイア分散化となります。
◆分散系メディアネットワークの可能性
アンディ:AJとしては、いち早くこの変化に気づき、日本初の「分散系メデイア・ネットワーク」の構築を進めようとしています。我々の「分散系メデイア・ネットワーク」は、従来のメデイアと同じように、広告主の要望に応えて、一定のデモグラフィックデータを元に、それぞれのユーザー層にターゲティングさせることが可能です。

ただし、私たちの「AJメデイア・ネットワーク」では、ユーザーは伝統的なメデイアのような形態で集まることはありません。ユーザーは分散して存在しています。むしろ、デモグラフィックレベル(例えば、健康に関心はある、または海外ウェブサイトを見ている日本人など)でターゲットすることで、確実なメッセージを届けます。場合により、新たなTechnology Platform(たとえば、ウィジェットなどを通じて)でお届けするになります。
◆日本へ紹介した、US情報サービス&テクノロジー
アンディ:これまで、AJアドバイザーの主要業務は、米国の最新ITテクノロジーを日本企業に紹介し、その導入サポートをすることにありました。日本経済新聞社様とCNNジャパン様に、ウィジットサービスの「ニュースゲイター」を紹介し、実際に導入していただきましたし、全米最新医療情報の「ヘルスデイ・ジャパン」の開設も、AJアドバイザーを通じてのものです。また、2008年11月にローンチした女性系ADネットワークの「Glamジャパン」の導入にも尽力しました。
日本ではまだそれほど有名ではないと思いますが、Glamはアメリカの女性向けプレミアムADネットワークで、Glam.jpはその日本版にあたります。米国のGlamは、2006年9月のオープン以来、急成長を遂げているIT業界では注目のサービスで、米トラフィックランキングではAmazonに次ぐ、総合第10位にまで成長しているのです。

Glamを日本に紹介したときは、私自身、あまりの反響の大きさに驚きました。広告主や代理店は、ヤフーに代わる出稿先を探していたようで、Glamへの期待がうかがえました。もちろん、Glamにはその役目を果たせるだけの可能性があると、私も考えています。
そのほかにも、料理動画番組のグルマンディア、USN、バーチャルEXPOなど多数のサービスや技術を紹介しようとしているところです。

◆AJが期待するNEXTアイディアとは?

アンディ:アメリカには、本当にいろんな新しいサービスがあります。なかでも私が特に期待しているのが、動画コンテンツを扱ったサービスです。AJでは分散系ネットワークのメディア推進を行っていますが、そこに組み込む形で、ぜひ動画コンテンツを提供したいと考えているところです。
ただし、ここでいう動画とは、一般ユーザーから投稿された作品ではなく、あくまでプロにより制作された映像でなければなりません。スポーツ、エンターテインメント、ドキュメンタリー…、どんなジャンルでもかまいませんが、それらプロ・コンテンツを配信し、そしてそれを個人のメディアに掲載できる技術を提供していくこと。さらには、そこに広告をどう絡めていくか、その営業サポートもしていきたいと考えています。
◆DOMOと一緒に「ネットワーク・メディアの発信基地が目標
アンディ:DOMOをパートナーとして選んだ理由は、ひとえにDOMO代表の占部さんと仕事がしたかったからです。日本人では数少ない「分散系ネットワーク・メディア」という考え方を理解する人物でした。Glamを日本に導入する際、一緒に仕事をしましたが、彼が私と同じ考えの持ち主だと、そのとき強く感じました。
それに占部さんと仕事をするのは、非常に楽しい。彼と一緒に話していると、新しいアイディアがどんどん浮かんできますし、だからこそ新しいチャレンジもできると思っています。
今後はDOMOを、日本における分散型ネットワーク・メディアの発信基地に成長させることを目標に、占部さんと協力してビジネス展開していきたいと考えています。


◆事業内容と主な活動
- 米国WEBを見る日本アクセスに向けたADネットワークの運営
- 米国ウィジェット配信プラットフォームの構築・運営
- 米国情報サイトからのコンテンツ提供・配信
- 米国のIT情報・テクノロジーの調査・情報提供
Andy Meyers(アンディ・マイヤー)さんの経歴
温泉好き、居酒屋好きの日本フリーク。
出張時でも都内を走るランナーの素顔

アンディ:大学3年生のとき上智大学国際比較学部に留学したのがきっかけで、日本との関係はスタートしました。留学中は日本経済新聞の翻訳者や、京都にある日本レストラン「串八」でカウンター料理人を務めた経験もありますね(笑)。 AJアドバイザー設立以前は、いろいろな仕事に関わりました。Double Click Inc.では日本法人株式の新規公募を監視しましたし、チェースマンハッタン銀行および東京三菱銀行に勤務したこともあります。
また1994年から1996年にかけて、当時のウォルター・モンデール駐日大使の特別顧問を務め、大使と主要なメディアとの関係維持や大使館のコミュニケーション戦略の策定などに携わりました。ちなみに、この特別顧問というのは、モンデール大使が私のために新たに創設してくださった職なんですよ。
AJアドバイザーを設立してから今日まで、数々のアメリカIT情報を日本に持ち込んでいます。そしてこれからも、日々進歩する技術や情報サービスを紹介することで日本のインターネット社会に貢献し、名を残すような仕事ができればと考えています。
コロンビア大学でBA(文学士号)を、コロンビア大学国際公政策大学院(School of International and Public Affairs)でMPA(国際関係論の修士号)を取得。1994年~96年にかけて、ウォルター・モンデール駐日大使の特別顧問を務める。AJアドバイザー設立後は、ヘルスデイ、ニューゲイター、Glamを日本に持ち込むなど、アメリカと日本IT業界の橋渡し役として活躍中。
